ITエンジニアのブログ

IT企業でエンジニアやってる人間の日常について

社会人のコミュニケーション力についてエンジニアが感じたこと

始めに

ソフトウェアエンジニアとして、また社会人として数年の時を過ごし、自分自身が成長したと思うような事柄がいくつかあります。コミュニケーション力はその内の一つです。

コミュニケーション力が必要とはよく言われているものですが、必要と言われたからといってどうしたら良いのか、どうすれば身につくのか分からなかった経験が私にあるので、同様に考えられている方がいらっしゃれば参考になれば良いかなと思います。

あくまで、IT企業で働くエンジニアの場合なので、他の業種の場合は少し変わってくるかもしれませんし、私とは全く異なるような考えを持たれている方もいらっしゃる可能性についてはご理解ください。

本題に至る背景

私の過去、学生時代について話します。
私はとても人見知りする性格で、仲の良い人以外とは色々とお喋りするものの、それ以外の人とは本当に最低限の必要な会話のみをしていました。高校生の時までは級友と同じ教室で長い時間を過ごすため、自分を伝えたり知ってもらう機会も沢山あったので良かったものの、大学生時代はそうもいかず、孤独な気分を味わっている時期がありました。自己評価としても凄くコミュ力の低い人間だと思っていたため、就職活動でそういうのが主に評価されるのであれば凄く不利になるな、嫌だなと思っていました。

実際に就職活動は甚だ苦戦した過程がありましたが、これに関して、私の魅力の無さやコミュニケーション力の不足からくるものだろうと、半ば諦めの気持ちで、考察の材料もないため徹底的に分析をすることもありませんでした。

なんとか採用していただいた会社で数年働きましたが、その社会人経験で体感したこととして、社会人に求められるコミュニケーション力は、大学生の時に欲しかったそれとはかなり性質が違うことに気が付きました。そのことによって、今までよくわからなかった概念の正体がわかり、視界がひらけるような感覚があったのです。

私が考える社会人のコミュニケーション力

社会人のコミュニケーション力とは、大学生でよく言われるそれとは違い、知らない人とすぐに打ち解けたり、飲み会で騒いだり、居酒屋や牛丼屋で「アッ...」とならずに店員さんを気兼ねなく呼ぶスキルではありません。勿論、それらは生活上役に立つし、仕事でも役に立ちうるものでありますが、この話での主要たるものではないでしょう。必要なのは、困っていることを相談したり、そのために誰がどんな情報を握っているのかを常に把握したり、仕事を進める際の情報共有で情報を過不足なく連ねて発信したり、仕事仲間のために自分の持っている情報や知識を伝えたり、といったことを適切に行う力です。これらは、ただ単純に気さくかどうかなどの性格によるものではなく、専門知識の深掘り、あるいはビジネスの対象としているドメイン知識(※1)の理解、あるいは文章の理解力や思考力といったものです。そして、それらは十分に鍛えうるチャンスのあるものに由来します。

上記のようなことを、業務を進めていくにつれて、ああ、こういう意味だったんだと実感するに至りました。あくまで私が体感したことで、正解というものではありませんが、自分自身にはかなり確信を持って腹落ちできました。

専門知識の深掘りによってコミュニケーション力が高まるということについてもう少し掘り下げて説明してみます。ソフトウェアエンジニアの場合、プログラムやシステムを動かしているときに問題に差し掛かった場合、さて相談しようとなったときに、知識が少ない状態だと「なんかエラーが起きました。こう書いてあります。」といった説明だけしかできないかもしれません。しかし、知識や経験がある程度身についた場合、「Aを実現するためにBが必要なので、資料Cに記されている手順を実行したところ、Dというエラーが出ました。Eといった理由でFである可能性が考えられますが、いかがでしょうか。Gを行っても良いですか。」のように、具体的な説明ができるかでしょう。これで、円滑な情報共有が行われ、仕事が停滞せずに進みます。また、いつ相談すべきか、いつこちらから情報提供すべきかといったタイミングに関しても、何となく分かるようになってきます。ドメイン知識でも同じようなことが言えますし、勉強などで鍛えられる文章の理解力や思考力を発揮すれば、キーワードの選定や文章構成が洗練され、一つ一つの文章の精度が底上げされます。

私の場合は、仕事を進める上で数年の時間をかけて自然と身についていったものではありますが、この到達点がわかっていれば、意識的な訓練をすることも可能だと思われます。少なくとも、「ノリよく話そう!」と言われてもすぐに実行するのは難しいかもしれませんが、相手側の脳内で再現ができるように、(上の例では)背景、理由、自分がどうしたか、これからどうしようと思っているのかなどのポイントを押さえて文章に起こす、というのは、思考の訓練ができている人であれば素直にできることではないでしょうか。

私が苦戦した就活の場面でも、同じことが言えたはずです。ハキハキ発声する、円滑に話すといったことは、もちろん良い第一印象を与える上では重要ですが、肝心の話の中身については、例えば自分の強みはこうで、それはどういった経緯で身についたもので、ああいう場面で応用ができて、どういった点で他と差別化ができるのか、のように、初対面の相手がきちんと理解できるように本質的な構成要素を選定し、鍵となる単語を並べ、筋道を立てて伝えれば、良い印象となって残るはずです。魅力が無いのではなく、魅力が相手に伝わっていないだけだったのでしょう。

派生して

コミュニケーション力を身につけた因果関係か、単純に年齢を重ねた結果か、社会人として沢山の人と関わるようになったゆえか、真相はわかりませんが、人に気軽に話せるようになりました。初めて会う人と世間話を交わしたりとか。何かの店で店員さんが近くにいないときも、その場まで歩いていって呼んだりとか。

最後に

私自身もまだまだコミュニケーション力が高いとは言えませんが、社会人経験で気づきを得てとても成長できたと思っております。要は、相手が思考内で状況の再現ができるように、各構成要素を並べて伝える、ということが大事です。仕事以外の場面でも使えるでしょう。コミュニケーション力という得体のしれないものに悩んでいる方は、様々な方の意見を取り入れてみてください。私の一例も参考になると嬉しいです。

補足

※1
ドメイン知識:扱っている対象の知識のこと。例として、ゲーム業界ならゲームの知識、広告業界なら広告やマーケティングなどの知識。